死ぬ覚悟も生きる覚悟もない
(・_・)「僕は死ぬ覚悟もないが生きる覚悟もない」
(・_・)「自殺は怖くてできなかった、だから生きている」
(・_・)「消去法的に生きていくという選択をしたからか、日々の生活は非生産的でクソみたいなものだ」
(・_・)「朝 お布団から出るのが億劫だ」
(・_・)「昼 リビングにいる家族の目が怖い」
(・_・)「夜 今日も何も変わらない一日だったと後悔し自己嫌悪に陥る」
(・_・)「そしてお布団の中で明日こそは実りのある一日にしようと決心する」
(・_・)「今日までの僕とは今日きりだ」
(-_-)
(-_-)
(・_・)
(・_・)「朝 お布団から出たくない」
(・_・)「昼 家族と会いたくないから自室にこもろう」
(・_・)「夜 今日も何も変わらない一日だった」
(・_・)「毎日が無気力で何もやる気が起きない、限りなく死んでいるに近い状態である」
(・_・)「いわば生きている死体だ」
(・_・)「養う親にとってはこれほどタチが悪いものも無いだろう」
(・_・)「生かしていても何の見返りもない、能力が無いから将来にも期待できない、能力を身につけようという気もない」
(・_・)「それでも家族は、僕を家から追い出したりしない」
(・_・)「これが無償の愛というやつなのだろうか」
(・_・)「だとしたら、せめて僕が人生を楽しんでいれば親孝行になるだろうか」
(・_・)「そういった無気力状態になったのは大学三年の中頃だった」
(・_・)「それまでは暇があればゲームをしたり、ネットをしたりしていた」
(・_・)「そんな生活は手本にすべきではないが、僕は楽しめていたのだろう」
(・_・)「三年にもなると就職活動の準備が本格化し、学内ではマナー講座とか模擬面接だとかが開講されるようになったが、働くことが漠然と嫌だった僕はそういった活動をほとんどしなかった」
(・_・)「周りが就活の準備を始めている中、焦りはあったが行動には繋がらなかった」
(・_・)「ふと会社に属して働く日々を想像すると吐き気がした」
(・_・)「朝 眠い目をこすりながら早く起きて、人で溢れる通勤電車にのる」
(・_・)「昼 上司からの叱責を受け仕事のできない自分に腹をたて落ち込む」
(・_・)「夜 夜遅くの電車に乗りながら、明日からもこんなことが続くのだと絶望する」
(・_・)「皆そういうものだと言われても、そういうものだと割り切ることができなかった」
(・_・)「今までは見て見ぬふりをしてこれたが卒業の時が着々と近づいてきて、将来を考えずにはいられなくなった」
(・_・)「だから大学から帰ってきたらPCをつけてお気に入りのサイトを巡回して、逃避するようにすぐ寝るようになった」
(・_・)「一日の睡眠時間は12時間程度になっていただろう」
(・_・)「寝ることが趣味だというつまらない人間にはなりたくなかったが、まさにこの時そうなっていた」
(・_・)「新しくゲームを買っても数時間で辞めてしまうし、ネットも興味のあるコンテンツは見尽くしたと思っていた」
(・_・)「もちろん勉強や就活などしなければならないことは山積みだった」
(・_・)「しかし、将来のことが不安だったり過去のことを悔やんだりするばかりだった」
(・_・)「今まで楽しめていたことが楽しめなくなった自分自身も信じられなかった」
(・_・)「頭をよぎるのはそんな負の感情ばかりで頭がおかしくなりそうだったから、何も考えずにいられる睡眠は最高だった」
(・_・)「月並みな発想だが、寝ている間に死ねたらいいのにと何度も思った」
(・_・)「授業は最低限出席していたが、それ以外の時間は空虚で、四年生に進級してもその状態は変わらなかった」
(・_・)「四年生になると就職活動に加えて卒業論文もこなさなければならないから、何も行動を起こせなかった僕の状況はますます悪くなった」
(・_・)「めんどくさい」
(・_・)「卒論のテーマは三年の終わりには決まっていたから、あとは実験・制作をするだけだった」
(・_・)「自分の興味のあるテーマが見つかったし、三年時の実験も楽しめていたと思う」
(・_・)「だがいかんせん将来の不安が大きかった」
(・_・)「就活をしていないのだから不安になるのは必然だが、何もできなかった」
(・_・)「めんどくさい」
(・_・)「気づけば四年生になってから実験にも手をつけなくなっていた」
(・_・)「めんどくさい」
(・_・)「ゼミで行う卒論の発表練習の資料は作った」
(・_・)「だが実験をしていないため、三年の終わりごろから本質は何も進んでいなかった」
(・_・)「めんどくさい」
(・_・)「外掘りを埋めていたと言えば他人も納得するかもしれないし、論文を書くのだからそういうのも大事だ」
(・_・)「結局僕の発表は三年の終わりごろ発表したものと代わり映えしなかった」
(・_・)「めんどくさい」
(・_・)「対して他のゼミ生は独創的なアイデアを発表し絶賛されていた」
(・_・)「僕の進歩の無さを発表と言う場でまじまじと自認させられたことに悲観した」
(・_・)「何かがプツンときれた」
(・_・)「なにもかもめんどくさい」
(・_・)「夏休み中に死のう」
(・_・)「決心するに至ったのはこの時だが、それまでもぼんやりと自殺を考えていたと思う」
(・_・)「卒研や就活、就職に失敗した未来や奇跡的に就職できる未来どれを考えても絶望しかなかった」
(・_・)「今まではのらりくらりとやってこれたが、それもここまでだった」
(・_・)「死ぬタイミングとしてはこれほどいい時期も無いと思った」
(・_・)「小中高と楽しい時はあったし、大学では友達はいないが自由に生活させてもらい、モラトリアムも終わりというところまで過ごしきった」
(・_・)「この先は多分頑張れないし、苦しい事しかないだろう」
(・_・)「頭の中ではめんどくさいという言葉が渦巻いていた」
(・_・)「頭の中が煩雑としていて考えることをしなかった」
(・_・)「なにか解決法を探すこともしなくなった」
(・_・)「それからゼミや他の講義に出席しなくなった」
(・_・)「もともとサボリがちだったが、全て投げ出した」
(・_・)「あと少し頑張れば単位を取れるものもあったが、死という免罪符はなるほど万能だ」
(・_・)「ある講義でのグループ制作だけはなんとか完成させて死のうと思っていた」
(・_・)「グループの人に借りがあったのでその返済をしなければ、というわけだ」
(・_・)「こういった時だけ義理堅くなる自分に腹が立ちつつも、無事に制作は終わった」
(・_・)「とても清々しかった」
(・_・)「それからは、自分の部屋にあるものを売って少しでも資金を増やした」
(・_・)「資金というのは、自殺カウントダウン旅行のためのものだ」
(・_・)「行きたいところに行って観光をしてお金を使いきり、満足したらその地の崖で飛び降りて死ぬ、という計画だった」
(・_・)「教授から電話が来たのをきっかけに、僕は北海道への航空券を買った」
(・_・)「北海道か沖縄で迷っていたが、ゴキブリが多いのは嫌なので北海道にした」
(・_・)「行くかどうか迷っていたが、教授に会った」
(・_・)「内容はゼミに数週間無断欠席していたから心配だったということ、なぜ欠席したかということなどだ」
(・_・)「加えて、まだ間に合うからと大幅に進捗が遅れた分を取り返す提案もしてくれた」
(・_・)「これが引き返す最後の機会だった」
(・_・)「だが、僕はもうそこから巻き返すために頑張る気力もなかった」
(・_・)「もう一回やってみますと思ってもいないことを口にして学校を後にした」
(・_・)「それから一週間後、片道切符を手に北海道に行った」
(・_・)「小樽やら美瑛やら旭川やらの観光をした」
(・_・)「小樽のちょっと先に崖があったから、そこで飛び降りようと思った」
(・_・)「何メートルかは分からないが、手前の岩肌に落ちれば死ねるだろうという高さだった」
(・_・)「だが死ねなかった、恐怖に勝てなかった」
(・_・)「手すりの上に座った」
(・_・)「手すりを越えて崖にたった」
(・_・)「目の前に広がる海に呑み込まれそうで怖かった」
(・_・)「自殺を決心した人間が呑み込まれるなどと言う、これほど恥ずかしい話もないだろう」
(・_・)「ゴールテープを切るように身を投げ出せば、飛び降りることができた」
(・_・)「前人未到の地に立ち入るように一歩踏み出せば、飛び降りることができた」
(・_・)「しかし、強風や誰かの手が僕の背中を押してくれるのを待つことしかできなかった」
(・_・)「結局僕は死ぬ勇気が無かったのだ」
(・_・)「リストラされたわけでもない、いじめられていたわけでもない」
(・_・)「怠慢な自分を認めることができず自殺と言う道に逃げ、あげく死ぬこともできなかったのだ」
(・_・)「我ながら、同情のしがいもない動機である」
(・_・)「今 人生が楽しくない」
(・_・)「僕は目標も無くのうのうと生きている」
(・_・)「やりたいことがわからない」
(・_・)「これからどうしたいのだろう」
(・_・)「どうすればいいのだろう」