卒業

先日、大学を卒業できることが確定した。

 

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学校からの帰り道、在校生専用サイトにログインし「卒業合格」の四文字を確認すると、少しの安堵と後悔、そして不安が入り混じる感情が押し寄せてきた。最後には大きな虚無感となって、僕の心にずっしりと居座った。

卒業とは本来、晴れやかで希望に満ちたものなのだろうか。小学校や中学校を卒業した時の気持ちなどいちいち覚えていないが、少なくとも今のように灰色な気分ではなかった。卒業式の時点で進路が決まっていなかった高校生の頃でさえ、これほど絶望してはいなかった。大学に進みほどなくして自己意識を持つようになり、それが過剰になってしまった今、「卒業後は社会の中での自分の立ち位置はどうなるか」を嫌でも考えてしまう。

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内定はないため、普通とされる人生の枠からは外れるだろう。おそらく今自分が思っている以上に状況は深刻だが、現状を改善する気は全くおきない。このままだと近い将来もっと不幸になり、その時になって努力しなかった過去の自分を恨むことになる。しかし、僕は未来への不安をエネルギーにして今を頑張るということができない。どうしても現状維持の選択をしてしまう。その結果、不安や焦りだけがいつまでも滞留し、心に負荷をかけることになる。

「現状維持は衰退」とはよく言ったもので、僕は年相応の何かを身につけず、24歳まで生きてしまった。僕の人生は諦めの連続で構成されている。成功体験がないため自信が持てず、何も変えられない。学位を得る頃には何かが変わっているだろうと微かな希望を抱いていたが、結局はこれだ。

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僕の大学生活は一言で言うと「無」だった。4年次に2度留年したため、大学には6年間在籍したことになる。だが、6年間を振り返っても、何も思い出せない。印象的な出来事は何もなかった。いや、留年後2年間の精神的な辛さは今尚染みついている。この6年間を総括すると、何も無い、または辛かったのだ。0以下の大学生活からようやく脱せると思えば、清々しさが無いわけではない。しかし、貴重な大学生時代を無為にしたこれまでの人生の延長線上にある未来を、やっていく気概がない。

 

 18歳から24歳という心身ともに瑞々しい貴重な時期を、棒に振ってしまったのだ。

 

「大学生時代を無駄にした」と自分で言葉にするだけでも精神的な苦しさがあった。卒業を迎える今、一区切りをつけようという思いがあるから言えることだ。

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留年時に抑うつ状態になってからお世話になっている学生相談室のカウンセラーに、「大学に入らない方が良かったかな?」と聞かれたことがある。もちろんいきなり言われたことではなく、自分の胸中を吐露して精神的苦痛を発散させる過程でのことだった。学校での過ごし方、休日の行動、普段考えていることなど、今まで他人に話すことがなかった内容も全て打ち明けたうえで投げかけられた言葉だったため、何も言うことができなかったが、ただただ「多分そうなんだろうな」と思った。これまでの苦痛に耐えた時間や親に払ってもらった膨大な学費、それら全てを否定することになる言葉を本来認めてはいけないのだろうが、あまりに率直で悪意のない一言だったため、素直に心に刻まれた。 

親には本当に申し訳ないが、 僕は大学に行く意味が無かったと思う。

 ----------------振り返り-------------------

-----------------今--------------------

卒業が決まってからは大学に行く必要がなくなり、バイトもしていないため、昼夜逆転した自堕落な日々を送っている。去年の春休みにピッキングのバイトで稼いだお金が尽きかけているため、外出もあまりしていない。1日の半分以上は寝ていて、残りの時間はTwitterをなんとなく見たり、特段面白くもないゲームをしている。

普通の人は何かしらの活動をするために身体の充電として睡眠をしているが、僕は睡眠こそを主目的としていて、他の活動はおまけのような感じになってしまっている。寝ている間は思考の波に襲われずにすむからだ。今は留年直後や卒検の締切直前の時のように極端なネガティブ思考はなくなったが、ふとした瞬間に自分を客観的に見てしまい、焦燥感や無力感に陥るため、防御手段としての睡眠が必要になる。

ゲームをしたり、アニメを見たりしていると、「こんなことをしていても時間の無駄じゃないか」と考え出してしまい、心の底から楽しめることが無くなってしまった。何をしていても、根本の生きづらさからは逃れられない。だから、できればずっと寝ていたい。 起きていても意味がない、生きていても意味がない。

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過去に固執していると、本来は不定で自由であるはずの未来も不幸で縁取られていってしまう気がする。解ってはいるが、割り切ることができない。